手島圭三郎の木版画絵本ができるまで(その2)
木版画絵本ができるまでを、手島先生の言葉と写真で綴ります。(出典はその2ページ末尾に記載してあります)
原寸大の下絵
原寸大の下絵を描くときは、張り切って1日に6場面、7場面を描くことがある。いわゆる寝食を忘れるときである。何しろ絵本の姿がだんだん現れてきて面白く、一方で不安なときでもある。ストーリーに不満が出て中断し、なかなか新しい案が出てこない場合は疲れ、やり直しの山ができる。それをやっと越えて15場面の下絵が完成すると、創作者の幸せを感じる。

ストーリーチェック
原寸下絵が完成すると出版社の編集者と打ち合わせに入る。第一読者の立場での作品評となるが、これは大切なことで作者にとって分らないことを知る機会になる。編集者には読者がどのように反応するか分かるからである。編集者と作者はお互いの力を認め合ってこそ良い仕事につながる。
木版原画
下絵を裏返し、明るい方向へ向けると透けて見える。ガラス板に裏返しの下絵を止めて窓に立てかけ、逆になった構図を見て板木に墨を使って描く。描き上げて乾かし全体に薄く墨を塗り、彫り跡が分かるようにする。

骨版
見開き一場面の骨版(白黒)を彫り上げるのに一日では終わらず、翌日の午前中になるのが通常のペースである。なにしろ木版は修正が利かないため緊張する。彫って気に入らない箇所が出たら、別の板木で初めからやり直しとなる。(当館に展示しているのが刷りに使われなかった板木です)
仕事の順番は、15場面の骨版と各ページ3枚の色版。表紙・裏表紙・中扉・見返しを含む70枚の板木が九月末までに揃えば順調である。

刷り仕事
色の面積の広い色版から3版を重ね、最後に墨で骨版を刷る。この一連の作業は中断できないため、一気に進めなければならない。熟練が要求されると共に相当な力も必要となる。汗が版木の上に落ちないように鉢巻も欠かせない。

和紙
手漉きの上質和紙を使って刷る。刷り上がっていくのを見るのは、それまでの仕事の成果を確認できる喜びがあるが、やり直しも多い。たとえば、第1場面に刷った空の色より、第3場面に刷った色の方がより美しく見えた場合、第1場面を刷り直すことになる。

原画の刷り上がり
10 月の終わりになって刷り上がった原画を出版社宛に発送して、今年の作品が完結したことになる。そのための発送作業は、仕上げの儀式のような思いがする。絵本作業カレンダーを見ると、最初の絵本を創った40 代も80 歳代も変わらないペースで進めている。多少の自負は感じるが、人間は締切がなければつい怠けてしまう。強制されることも必要なのだと思う。

『北海道の大自然と野生動物の生態をモチーフに
絵本創作法を語る
~手島圭三郎仕事の流儀~』絵本塾出版
第三章 手島圭三郎のアトリエから
及び
『増補改訂版 手島圭三郎全仕事
~木版画で極めた聖域[原始の森]』絵本塾出版
第2部Ⅴ「手仕事を覗く」
より抜粋引用