しまふくろうと流木
手島の一大転機となったのが「シマフクロウと流木」の版画である。一連のシマフクロウ版画の結晶ともいえる作品だ。
この作品により福武書店(現・ベネッセ)の児童書部門編集長松居友(当時)から、「この絵で一つの物語をつくってください。子どもの本だから子育てのシーンだけは入れてください。あとは児童からお年寄りまで見てもらえる新しい絵本にしたいので、自分の持ち味を崩さずに力を発揮して自由に描いてください」との注文があった。
予想だにしていなかった版画絵本の依頼であった。木版画の世界で、北方的な大自然の賛歌をうたうような作風の手島版画の魅力に触発された松居編集長の慧眼もさることながら、その期待に十二分に答えた手島の力量もまた異才ゆえである。
こうして、これまでの日本の出版界では試みられることのなかった木画絵本、「しまふくろうのみずうみ」が、1982(昭和57)年3 月初めて世に送り出され、手島圭三郎47 歳での絵本作家デビューとなった。この絵本は第5 回絵本にっぽん賞(現・日本絵本賞)を受賞し一躍絵本作家の地位を確立した。
(『増補改訂版 手島圭三郎全仕事 ~木版画で極めた聖域[原始の森]』絵本塾出版
第2部Ⅷ「解題」手島木版画絵本の隠し味より引用)